side:Jun Kusakabe



もうすぐ、永遠とも思えるほどの長い夜が明ける。

昨日の昼間から降っていた雨は今朝方になってやっと止み、カーテンの隙間からは白地んだ空が見えている。


寝返りをうつと、ぼくの隣で小さな寝息をたてている祈(イノリ)と向かい合う。その先には昨日の予期せぬ来客、美樹(ミキ)ちゃんが眠っている。



昨日美樹ちゃんに手当してもらったおかげですっかり痛みが消えた手の方の肘を立て、顔を乗せると、祈を通して彼女の姿が見える。

大きい目が閉じ、ふっくらとした紅色の唇が開閉するたび、安らかな寝息をたてている。

彼女の存在を意識すればする分、ぼくの心臓は動悸(ドウキ)を起こし、跳ねた。


おかげでぼくは昨日から眠れずじまいだ。


それは美樹ちゃんも同じで、初めこそ慣れない枕ということもあってか寝づらそうにして体を動かし、身じろぎを繰り返していたものの、それでもいつの間にか規則正しい寝息が聞こえ、結局、起きているのはぼくひとりだけという状態に陥(オチイ)ってしまった。


いくら他人の家とはいえ、昨日、彼女はたしかに熱があったし、体力は消耗していたんだ。寝付けて何よりだ。


安心したのも束の間、ぼくの脳裏に疑問がわく。


その疑問は、『美樹ちゃんはなぜ、あんな集中豪雨の中でうずくまっていたんだろうか』というものだ。


一夜が明けた今頃になってそう思うのは、彼女のことで頭がいっぱいになってしまい、それどころじゃなかったからだ。