side:Miki Morimoto



「行ってきま~すっ!」


頭上には雲ひとつない青空が広がっている。

たまに吹くそよかぜが並木道を通り抜け、木の葉を揺らしてカサカサと音を立てる中、あたしは手を振って、意気揚々(イキヨウヨウ)と『かなりあ幼稚園』の門の中に入っていく祈(イノリ)ちゃんを見守った。



そんなあたしの隣には、とても大好きな彼がいる。

彼っていうのはもちろん、祈ちゃんのお父さん。

名前は日下部 潤(クサカベ ジュン)さん。


慶介(ケイスケ)と別れた後、思いもよらない彼からの告白を受け、彼と正式に一緒に住むことになってから、今日で一週間が過ぎた。


……正直、今でも自分の身の上がとても信じられない。


だって、あたしみたいな田舎娘が可愛い子供さん――祈ちゃんのお父さんである優しくてカッコいい人と両想いになれるなんて思いもしてなかった。


これは本当に現実だろうか。

疑ったあたしは隣にいる彼の姿をちょっぴり盗み見てみる。

すると、彼は視線に気がついたのか、顔を合わせてにっこり微笑んでくれた。


――だけどね、視線が交わっただけでも緊張するの。

心臓はドキドキするし、頭の中が熱に浮かされ、体が熱くなる。


見つめ返して微笑むなんて芸当は今のあたしにはムリ!!


視線をそらし、顔は地面を見つめてしまう。