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「美咲!お願いがあるの」


午後5時すぎ。


チャクラでの出来事をきっかけに頓悟した私は、喫茶店から飛び出して図書館へ走り、開口一番まくしたてた。


「どうしたの?寝てなきゃダメじゃない」


目を見開く美咲に構うことなく問いかける。


「彼――司さん、もういないわよね?」


「とっくに帰ってるわよ」


「じゃあ住所は分かる?」


矢継ぎ早に質問すると、横にいた博美さんが手で制した。


「ほらほら。片瀬さん、どうしたの。落ち着きなさい」


「あ、は、はい……」


整え忘れていた呼吸を直すように、一度大きく息を吸って吐いた。


「ふう……っ」


「そうよ。しっかり呼吸を整えて」


穏やかな博美さんの言葉が、次第に平静を戻してくれた。


「はい」


「どうしたの、雛子。ゆっくり話してみて」


「あのね」


倒れて自分を冷静に見つめ直し、マスターと話したことを思い出しながら、私なりに出した最終結論を、できるだけ素直に、詳しく説明した。


「――ってこと。彼をもう失いたくないの!」


話を聞き終えた美咲は、隣の博美さんを見た。