絹糸のような金色の緩い波だった髪が夜風にふわふわと舞っていた。

常盤色に輝く大きな二重の瞳をこれ以上はないほどに開いた少女が、信じられないと言うように彼を見上げていた。


人形のように細い四肢。

走っていたためなのか、彼女の頬はバラ色に染まり、小さな唇は熟れたリンゴのように赤く燃えていた。

人にしておくには勿体ないほどに整えられた顔立ちにはまだ幼さは残るものの、それでも艶やかな大人の女性へと資質は十分にあった。


そんな彼女の身体から一気に力が抜けるまでに時間はかからなかった。


一瞬、白目をむいた彼女の身体はくたりとその場に横なりに伏してしまい、微動だにしなくなったのだ。

少女の傍らに膝をつき、顔にかかる髪を持ち上げようと手を触れようとした瞬間、その手がグッとなにかに引っ張られた。


「これはなんの遊びのつもりだね?」


少女から視線を闇へとディーノは移した。

取り囲む下等な異形のモノたちではなく、その後方から。

赤黒い粘着質の蔦が伸びてきて、ディーノの左腕に巻き付いていた。