はぁ……はぁ……はぁ……

松明がぼんやりと照らす暗い道をただひたすらに走る影があった。

刺すほどに凍てついた空気に白い息が立ち上っては消えていた。

カツカツカツカツと……石畳の道に響き渡る高い靴音を追いかけるように、ヒタヒタ……ヒタヒタと複数の足音が聞こえていた。

黒いフードを目深にかぶったその影は振り返ることなく、一心に走っていた。


目指す場所はただ一つ。


ウズベクトを見下ろす小高い丘の上に建てられた古い館。

外観をイバラで覆われたその館にどうしても行かねばならなかった。


そう、どうしても――!!


「……!!」


それは一瞬の出来事だった。

前だけを見据えて走っていたことが災いしたのであろう、その影はバランスを崩し、その場に膝をつくように倒れてしまったのだった。