「恋愛って、しようと思ってできるものなの?」
そう訊いたら、華乃は目を丸くして手にしていた黄色のメガホンを落とした。
「えっ、……えっ?…えぇっ!?」
わたしが口にしたひとことに、ものすごく驚いたらしい。
放課後。
もうすぐやってくる体育祭にむけて、クラスの女子たちと用意したメガホンに持ち寄ったシールやリボンなどでデコレーションをしていたときのことだ。
「何かあったの?」
「……何か、ってわけじゃ、」
華乃が落としたメガホンを拾うと、その内側には、つい最近「きゅんとしちゃった」男の子の名前がピンク色のマジックで書いてあった。
どこから仕入れてきた情報かわからないけど、うちの学校に伝わる恋のおまじない、らしい。
想いが伝わるとか、伝わらないとか。
ついこの間、別れたばかりだと思っていたのに、ちゃっかりそれにのっかっているから。
「ただ、なんとなく。そう思っただけ」
「ふぅん」
わたしが拾ったメガホンを受け取った華乃は、内側に書いた名前を眺め、口元を緩ませる。