急がないと―また遅刻だわ、と思った瞬間。

 「あっ」

 10メートルくらい先を行く女性の髪へ、上から何か白い滴のようなモノがポタリを落ちた。


 その光景を見ながら、まるでそれがわたしの髪に落ちてきたかと思うほどのいやーな感触があった。


 そして、それとほぼ同時に、その女性の傍らの電柱の上で一羽のカラスがあざ笑うかのような鳴き声を上げながら飛び立った。


 「カァ~カァ~カァ~~」