正樹は美紀を産んだ結城智恵の生い立ちを調べようと、彼女が育った児童養護施設を訪れようとしていた。

原則一歳以上の幼児を養育する施設で、1998年に改名されるまでは、養護施設。
それ以前は孤児院とも呼ばれていた。


正樹は市役所へ行き、美紀と自分の戸籍謄本を取る為に申し込み用紙を二枚書いて申請した。


「御家族ですか? それでしたら、世帯主の方だけ申請していただければ御家族全員の謄本をお出し出来ますが?」

用紙を見た役人はそう言った。


「あ、それでお願い致します」
正樹はそう言いながら、前にも同じようか事があったと思い出していた。


そう……
それは美紀が本当は養女なのだと知った、あの高校への入学願書の書類だった。


――あの時も同じ事言われたな。

今はそれも懐かしい思い出だった。




その足で結城智恵が中学時代をすごした施設へ向かった。

持参した謄本を出して、自分が育てている娘の親がこの施設出身の結城智恵だと名乗った。


謄本と免許証を見て施設長は確かに本人である事を確認した。

正樹は目的は親捜しの為と打ち明け、保管されている資料の閲覧を請求した。