――ガチャッ。

玄関の扉を開ける。
美紀を朝花瓶にさした小手毬が迎える。


「ただいまー!」
一応リビングに声を掛けてみる。

でも返事はない。


(――あれっ、今日は確か仕事はなかったはずなのに)

美紀は小手毬の花びらを指でつついていた。
チラチラと小さな花びらが舞う。

美紀は慌てて、手でおさえた。


玄関で脱いだ靴を軽く磨いた後で、シューズボックスにしまう。

これも沙耶の勧める風水だった。

家族の人数分より多く履き物は置かない。
玄関は何時も綺麗に。
基本の中の基本のようだ。


鞄を廊下に置いて、サンダルに履き替えタタキからエントランスを掃く。
そして初めて家の中に上がった。