――ガタッ。

小高い丘の住宅地。
長尾美紀(ながおみき)が東側の勝手口を開ける。

そこは小さな花壇と畑につながっていた。


左てに見える玄関の脇にある生け垣には、季節ごと咲く白い花の木が植えてあった。

東北にある玄関……
いわゆる鬼門だったのだ。

かなり花びらの散ってしまった雪柳。
そして今は白山吹が可憐な姿を見せていた。


南側窓の下には小さな畑。
その向こうにはうっそうとした雑木林。
それは、崖へとつながっていた。


「あれっ、凄い……」
一瞬固まった美紀。
フェンスの先のある物に目が奪われたのだ。


「ママのごほうびかな?」
美紀はそう言いながらそれを見つめた。

美紀の視線の先にあった物……
それは白い蒲公英だった。

美紀は一瞬我を忘れた。


その時、顔を出したばかりの朝日が美紀を照らした。

美紀は慌てて、時計代わりの携帯をエプロンのポケットから取り出し確認した。


(――良かった、まだ大丈夫だ)

大きな伸びをした後、眩しそうに目をそらす。

本当はずっと見ていたかったのに……