「おはようございます!」
慣れた手つきで裏口の重い鉄の扉を開けた。私が勢いよく飛び出したせいで、朝礼の為に並んで立っていた警備員にぶつかってしまった。
「あっ!すいません!」
慌てて相手の顔を見上げると、私の知っている顔だった。彼はにこっと微笑んでいたのでほっとして胸を撫で下ろした。
「あれ?谷田部さんおはよう。気をつけてねー。まあ痛いって言うよりびっくりって感じだったけどね。」
彼は少し唇をすぼめながら、ぶつかった拍子にずり下がった眼鏡を片方の手で上げながら言った。

「なんだー。長野さんだったんだ。あ、そろそろいかないと!本当にすいませんでした〜。」今日は少し寝坊をしてしまったせいで髪の毛をセットせずに出勤するはめになった。後ろで長野さんが何やら言っていたが、急いで店舗がある2階へ向かった。