ひなと話していた時だった。



「ひな」


その声は、小林蘭でも…松村くんでもない。


「大陽…」


――ひなのことを名前で呼ぶ、数少ない人。



「蘭と、付き合ってんの?」

「なに?会話聞いてたわけ?」


「は?今教室に来たばっかなんだけど。蘭から聞いた」

「なんで!?蘭の友達!?」

「まぁな。蘭、いいやつだから。応援してる」

「ありがとーございまーす」

なにこの重苦しい雰囲気は。


ひな、どうしたの?



私も知っている。坂下大陽(サカシタ タイヨウ)。

ひなの幼馴染み。


「あのさ、用件ってそれだけ?それだけならもう帰ってくれない?」


なんでひな、こんな怒ってるの…?



「あー、俺の用件は、ひなじゃなくて、こっち」


いきなり指をさされて、びっくりした。


わ…わたし?

あんまり関わったことないんだけど…。


「ダメ。今私達大事な話してるんだから」


「いーじゃん。五分だけ」


「無理」


あの…

私の意見聞かずに物事をすすめないでいただけます?


「五分だけだから、お願い。いいよね?橘」