……来てるかな。


いやぁ、来てないでしょ。
でも、行くか。



ガラガラっ

「「あ!」」

目が合って、松村くんと同時に声が出た。


来てる。

ってことは、彼女さんと仲直りしたってことか…



「昨日はごめん。橘に対しての誤解はちゃんと解いたから」

「うん、ありがとう」

「でも」

急に松村くんのトーンが下がった。

「図書室で二人きりになったとき、一緒に勉強すんの止めよ」


それって、
つまり。


「花音に悪いからさ…」


やっぱり、
ほらね。



「うん、そうだよね、ごめん、図々しくて」


松村くんにとって、私は友達、ただそれだけ。

ちょっぴり近づいたと思った距離は、友達として近づけるギリギリのライン。



考えれば考えるほど、複雑で。


「今日は私達以外誰も来てないし、私は離れて勉強するよ!」


作り笑いをして、いつも二人で勉強する机から一番離れた机に荷物を置いた。


顔は笑ってるのに、心の中じゃ、大泣きなんて。



……こんなに離れてちゃ話すことなんて出来ないよ。

……こんなに離れてちゃ目が合って、照れることもないよ。