ルリア

物心ついた時から、執事やらメイドやら。
当時8歳の私にとって、ものすごーくどうでもいいことを父様に教わっていた。
10人もの執事の中から、専属の執事を1人選べと言われ、わたしを連れ出してくれる…。
このタイクツでつまらない日々から連れ出してくれるような人を選んだ。

実際、ここ数年で外出する回数はとても増えた。
いい選択をした。
確実にそう思った。

「ん~、いい朝ッ♪」
現:15歳、姫やってます。
「おはよ、ルリ。はい、おはよーのちゅーは?」
現:15歳、ルリア・マーガレット。
8歳の私、何でこんなの選んだの?!

「あー、こら、ダメだろ?ルリ。8歳の自分に語りかけたら。」
何で読まれてんのよ…。
そう。私はこの執事が大の苦手…でも好き…。
でも、いちいちキスせまってくるし、何よりもうっとーしい。

「あ、ルリ、今、俺のこと考えてた。」
もう一度言おう。うっとーしい。

「カシュ?何回言えば分かるの?勝手に部屋に入らないで!」
「えー?…んな事言って、毎日キスはするクセしやがって。」
…優しいキス。受け止める…私。
「んっ…。…もぅ…カシュのバカ執事。」
「何て?もう1回?」
「んなころ言ってなっ…」
また、キス。

「カシュ…なんでたまに声、低くなるの?」
さっきもそう。
「えー?」
「んなこと言って…」
声が違った。

「なんでだと思うー?」
ほら、また明るくなる。
「…分かんない」
「当てて」
「…二重人格」
ない知恵をフルに使って出た答えだった…のに!

「ぶっ…あっはは!!」
笑った…?笑いやがった!!
「…ッ!!も、もーいい!!朝ごはん食べてくる!」
言ってる間も笑い声。
ドアノブに手をかける。
…?声が止んだ。

「ごめん…ルリ。」

急に真険になったカシュ。
ごくり…ツバを飲む。
「なん…で?」
「声変えんの…」
続きが聞きたいのに、なかなか言わないカシュ。

「声変えんの、かっこつけー♪」
プチッ…
「あ…あれ?俺、マズった…?」
「カシュの…バカァァァァァ!!!」

何がかっこつけよ!
心配した私が馬鹿みた…い…?
…私、何を心配したの…?