「大河と菜穂って……」




何があったの?


二人が視界から消えてすぐ、小さな声で呟いた。


昔――あたしと菜穂が出会う前か、出会った後か。
分からないけど、あの空気は恋愛関係で何かあったのかもしれない。




だけど、その確信を得る言葉は出て来なくて、蓮もそんなあたしをわかっているのか、ただあたしを見詰めるだけだ。


だって、大切なことは、真実は本人たちに聞かなければ意味がない。




「蓮…」




あたしを見詰める蓮と視線を交わらせて。




「んだよ?」


「何でもない…」




少し目を下に逸らすと、蓮の両手があたしに向かって来る。




「な、なに……?」




あたしの困惑した声を無視して伸びる手。


パーカーの胸元を掴んだかと思うと、鎖骨あたりまで閉めていたジッパーを首が隠れてしまう一番上まで完全に閉めてしまった。




「ちょ、蓮…?!」




暑いし!と反抗するまもなく。




「行くぞ」




そう言って握られた手にそんな気すら消え去ってしまって。


あたしを引っ張るように歩き出した蓮に従って歩き出してしまうあたしは、大分蓮に惚れてると思う。