あれから数週間が経った11月上旬、あたしと蓮は隣の県にあるとある施設を訪れていた。



「やあ、マリー、蓮斗くん。来てくれてありがとう」

「ヘンリーさん。いえ、こちらこそ……」



まだまだギクシャクしたままのあたしとヘンリーさんを見ながら、蓮はペコリと頭を下げた。



「さっそく行こうか」



そう言うヘンリーさんについて行き、施設の中に足を踏み入れる。白い清潔な建物は、まるで病院みたいだ。



「電話をくれて、嬉しかったよ。本当にありがとう、マリー」

「いえ……」

「あれからすぐに主治医(せんせい)とも相談してね。リリーにマリーのこと見つかったって話したんだ」



ヘンリーさんは嬉しそうに話す。悪い話じゃない、良い話みたいだ。



「そしたらリリー、目の色を変えちゃってね。今まで何を言っても無反応だったのに……」



マリーのおかげだよ、そう言われてもよく分からない。

正直見たこともないリリーさんが、あたしを失ったショックで病んで病気になったって言われてもピンときてない。