【鷹樹side】



ブォンブォンと、バイクが唸る。

いつになく耳障りなその音が、俺の神経を逆撫でする。

今日、8月1日は俺の誕生日であるのと同時に、一年で一番と言って良いほど煩わしい日だ。

獅龍に入ってからほとんど家に寄りつかない俺が、一年で唯一あの人と顔を合わせる日。



本当は、家に行きたくない。

だけど、親父が必ず帰ってこいと連絡を寄越してくる。弟たちが、会いたいと言う。

だから仕方なしに誕生日だけは行くだけで、あの人がいる家は俺の帰る場所じゃない。



だというのに、今年はみんなで母さんの墓参りに行こうなんて言ってきた。

ふざけるな。俺が嫌っていると分かっていて、どうして俺たちの母さんの墓参りに一緒に行こうって思うんだ。あの人の思考回路が理解できない。

俺は……俺は、あの人が――由美さんが母親だなんて、認めてない。