〜勇ましき者〜



目を覚ます。



窓の光は薄暗く、空は濃い青。



時計の針は、5を指していた。



午前?…午後?



寝ぼけている。



午後のこの時間に、こんな熟睡しているわけないのに…。





なんだかモヤモヤする。



嫌な夢を見た…。



怖い夢ではなく、まだ幼かった頃の懐かしい夢。



ついさっき見ていたはずなのに、思い出そうとしても思い出せない。



遠い記憶のように、あやふやで懐かしい夢。



卒業文集の将来の夢に『有名になりたい』と書いた頃の夢。





あの頃、僕は何にでもなれる気がしていた。



怖いものも恐れず、その気になれば空だって飛べたんだ。





僕は寝返りをうつ。



あの頃の僕は、今の僕を見て、



笑うだろうか、それとも泣くだろうか…。



もぞもぞと、隣に眠る彼女が僕に寄り添う。



僕は、彼女を起こさないように、そっと布団を掛け直す。





あの頃の僕に言ってやろう。



「夢の形が少し変わっただけなんだ」



恋の一つもした事のないお前には、ちょっと早いかな?



大丈夫、そのうちわかるさ。





「いい夢が見れますように」



僕はゆっくりと目を閉じる。



明日の僕に怒られないように、僕は再び眠りについた。