〜あなたの初恋は、
        あたしの失恋。〜



「好きな人が出来たんだ」



幼なじみの彼の表情は、


照れくさそうで、嬉しそうだった。



「そっか。応援するね」



あたしの顔は、うまく笑えているだろうか…。



小さいころから一緒にいたけど、あたしとあなたは単なる友達…。





「告白した方がいいかなぁ…」


どうしようか、彼は真剣に悩んでいた。



「うーん…どうだろう」


どうすべきか、あたしは自分の事ばかり考えていた。





些細なことで喜んだり、落ち込んだり、


そんな彼を見るのは、初めてだった。





「付き合うことになった」


彼は満面の笑顔で、あたしに報告した。



「よかったね」


彼の満面の笑顔から、目を背けることしかできなかった。



あなたの幸せが、あたしを不幸にする…。





その夜、体を丸めて布団にくるまった。



泣くと思った。



正直…泣きたかった。



けど…涙は一滴も零れ落ちなかった。





「初デートはどこがいいかなぁ?」


「この服どうかなぁ?」


「喜んでくれるかなぁ?」



あたしは、ただ曖昧に頷くだけ…。





どうして…



あなたは無邪気に、あたしを傷つけていくの?



ねぇ…どうして?





あたしは立ち上がる。



自分自身を傷つける為に…



あなたをずっと好きでいる為に…



本当の涙を流す為に…



ちゃんと失恋する為に…。