(一)


罰ゲームに近かった。


夏休みの読書感想文をちょろまかそうとした織部一色(おりべ・いっしき)であったが、そうは問屋がおろさないわけで、今現在、彼は図書室にて本を読んでいた。


平家物語を。


「やってられっかー!」


どん、と机を叩いた。


夕暮れなので図書室に人はいなく、彼の虚しい叫びとなるが。


「平家物語で読書感想文書けってなんなん!?しゃらくせえぇっ。どんないじめだよ、やってられるか!」


担任が出した課題がそれだった。律儀にも平家物語を読み出した織部であったが、今になってこの物語を感想文にまとめられるのかと疑問に思い――うん、できない、と心の天使さんが囁いたためにキレてしまった。