あれだけブーブー文句を垂れ、丁重にお断りとか言ってたのに、速水は俺の車の助手席に座っていた。
しかも以前と同じように背筋をピンと伸ばして。
「何?また見張ってんの?」
「はいっ!真っ裸で吊るし上げの刑は嫌なので」
速水は背筋をピンと伸ばして、前を見たり横を見たりしながらそう言った。
「飯、何が食いたい?」
「何でも」
何でもいいが1番困る。
だいたい何でもいいと言うヤツに限って、選んだものに文句を言うのがオチだ。
てか、速水って動きが鳥みたいなヤツだな。
「じゃあ、俺の行きたいとこ行くけどいい?」
「はい。あっ!でもファミレスやファストフードはダメですよ?うちの学校の生徒がいるかもしれないので」
速水に言われなくたって、そのくらいわかってるよ。
俺は鳥みたいに首をカクカク動かす速水を無視して、車を郊外に走らせた。