「せーんせ?」



放課後――。


化学準備室で仕事をしていると、速水の元気な声が聞こえてきた。


桜の花も散り、ゴールデンウイークも終わり、そろそろ春も終わりに近付いた5月。


速水は天文部に入部してから今日まで、学校が休みの日以外は欠かさず放課後、化学室に来ていた。


速水の声を聞いても無視して仕事を続ける。


活動しない。


それが入部の条件だった。


速水は化学室で自主勉や宿題をして、本を読んだり携帯を弄ったりして過ごす。


そして時間が来たら帰る。


俺に相手にされなくても、飽きもせず毎日やって来る速水をある意味、凄いと思った。