「入部届、書いて?」
「はいっ!」
化学室の机に向かい合って座った彼女に入部届の紙とボールペンを渡した。
俺は天文部の部員の名前が書いてあるファイルを広げる。
名前の欄は20行くらいある真っ白なページ。
このファイルも使うことないと思ってたのに。
「名前は?」
俺はファイルに目を落としたまま彼女に名前を聞いた。
「はやみ、ことりです」
はやみことり、ね……。
「あっ!先生!名前の漢字が違います!」
「えっ?違うのか?ことりと言えば、この漢字だろ?」
「それに何で名字が平仮名なんですか?」
「えっ?いや、だってわからなかったから……」
ファイルには“はやみ小鳥”と書いた。
名字の漢字はわからなかったから平仮名。
名前は“ことり”と言ったら漢字は“小鳥”しかないと思ってそう書いたんだが……。