「…ふーん。で、あんたはどうしたの?」

全ての授業が終わり、今日は部活がない日な(文芸部は月、水、金にしか活動がない)ので、秋斗と一緒に帰っている最中、私達の周りから、女子達の歓声が聞こえた。
「?…何、芸能人でも来たの?」
私の声に何か不快なものが入っていることに気付いたのだろう、秋斗が歓声が上がった場所を指差し、あそこ、と言った。
「ほら、あれ…。春ちゃん見える?」
指差された方向を見ると、一人の男子が女子に取り囲まれているのが見えた。
「あらら、人気者は大変だねぇ…」
私の皮肉めいた台詞が聞こえたのか、その取り囲まれている男子は私達の方を向いて、にこっと笑った。
「うわぁ…キザな笑顔。すごい嘘っぽいね…」
その笑顔を見た秋斗は心底不快そうに私に言う。私はそんな秋斗に向かって
「ちょっと女の子にモテるからって、調子に乗ってるんだよ」
私達には関係ない。そういうと秋斗は、あはは、と笑い、
「春ちゃんは相変わらず容赦ないなぁ…」
と言った。

家に帰ると母さんが迎えてくれた。
「春華、お帰りなさい…」
ただいま、と私が答えると10個下の弟が、おかえりー、と廊下を走って来る。
「はいただいま♪でも、廊下は走っちゃ駄目だよ?」
はーい、と、(駄目って言ったのに)走って戻って行く弟。
その様子を見ていた秋斗は、ふふ、と笑い、
「弟くん元気だね」
と言った。
「まぁ、元気だけがとりえだからね…」
上がったら?と尋ねる私に秋斗は少し考えた後うん、と答えた。

…秋斗は一人暮らしをしている。
まだ彼が幼い頃に両親が交通事故で亡くなり、今は私の家の近くにあるアパートで生活している。
アパートの家賃は、彼の両親の遺産と、彼自身がアルバイトをして稼いだ分を当てている。

私は、秋斗を自分の部屋に連れて行くと、秋斗に今日あったことを話した。
「…秋斗。私やっぱり学校に通うの無理かもしれない…。」
いきなり切り出したからだろう、秋斗は怪訝な顔になり、
「…教室で、何かあったの?」
と尋ねてきた。
私は少し考えた後、今日あったことの中で一番だったことを話した。

私は対人恐怖症を持っている。
まだ小学生だった頃、「目付きが怖い」というだけの理由で、クラスメイトのみならず、学年全体でいじめられていた。
そのせい