腹痛で休んだ次の日は普通に登校した。

「心配かけてごめん」
私がそういうと秋斗はおどけたように、気にしないで、と言った。
「春ちゃんの体調が良くなってよかった♪」
秋斗は言うと、ニコッと微笑んだ。
「うん、ありがとね」
行ってきます、玄関を開けいつも通りに通学路を歩いていると、急に秋斗が立ち止まった。
「…どうしたの?」
振り返りながら聞くと、秋斗はううん、と首を振った。
「大丈夫だよ。……あれ…?」
「?どうした…」
の、と秋斗の見つめている方向を見ると、学年1のモテ男・北條冬真が立っていた。
「おはよ☆」
あの嘘っぽい笑顔で私達を見る冬真。
「…おはようございます。」
私は顔を背け、秋斗の腕を掴み、行こう、と言った。
「っと、そんなに忙ないでもいいじゃん♪一緒に行こうぜ?」
私達の行く手を遮るように進行方向に身を滑らせ、にこっと笑う冬真。
「キミ、しつこいよ。…僕達に何か用?」
秋斗が苛立ったように告げると、まるで初めて秋斗の存在に気づいたかのように目を丸め、すぐににこっと笑い、ごめん、と言った。
「オレ、仙宮さんに話し掛けてるんだけど?」
ぐっ、と秋斗が奥歯を噛み締めたのが雰囲気でわかった。
「…何の用ですか」
私が冬真の顔を見ずに尋ねると、冬真は芝居がかった風に手を広げ得意そうに言った。
「やっと口を聞いてくれたね。オレ、君と話がしたくてさー」
…だからなんだ。といいかけたが、口を聞くのも嫌だったので無視した。
「…こんなところで油売ってないで早く学校行ったらどうですか?『取り巻き』が、待ってるんじゃありません?」
それに、いつまでも目の前にいられるのは、気分が悪い。
私のそんな様子に気づいたのか、秋斗は私と冬真の間に立ち、強い口調で言った。
「とりあえず、僕達急いでるから。じゃあね」
秋斗は強引に私の手を引くと、元来た道を引き返した。