とても気持ちが良い昼下がり、私は窓際の自分の席でまどろんでいた。

私は今年、約1000人もの受験生の中から、この私立翠月(すいげつ)学院の高等部に生徒として迎えられた。
この翠月学院は、医療機関に就職する生徒が多く、将来精神科医になりたい私は、中学からの推薦で翠月学院に受かった。

(なんて、私にはどうでもいいけれど、ね…)

物思いに浸りながら、まどろんでいたら、
「ヤッホ☆何してんの〜?」
と、とても呑気(のんき)な声が頭上から聞こえた。
「…何の用?」
声に不機嫌な感情が出てしまったのだろう、呑気な声はその声に多少の不安感を孕(はら)ませて、
「え…なんか机に突っ伏してたから、具合でも悪いのかなー、って…」
成程、要するにまどろんでいたところを「具合が悪い」という風に解釈してわざわざ来てくれたのか…。
私は相手を安心させるためにさっきよりも柔らかい声で、ありがとう、と言った。
「大丈夫だよ、少し眠たくなっただけだから…」
すると相手は安心したのか、初めてその顔に笑みを見せた。


私の名前は、仙宮春華(せんのみやはるか)。私立翠月学院高等部の1年2組。好きな教科は国語と家庭(特に調理実習)で、嫌いな教科は数学と英語…。
部活は、文芸部に所属していて、将来の夢は精神科医になること。

「ところで、何の用?私、考え事してたんだけど…」
私はようやくまどろみから覚めた頭で安眠妨害をした相手に尋ねた。
すると相手は、安眠妨害したことなどまるで気にせずに、
「いやー、実は、次の時間英語なんだけど教科書忘れてさ…」
だから貸してほしいんだ、と言った。
私は、なんだそんなことか、などと思いながら、いいよ、と答えた。
「だけど、あんたが忘れ物なんて珍しいね、何かあったの?」
と教科書を渡しながら私は尋ねた。
「実は、昨日の夜夜更かししてさ、寝坊しちゃったんだよ〜(笑)」
と相手は、悪びれもせずに言った。
「…まぁ、あんたのことだからまたゲームしてたんでしょ?」
どうせこいつのことだ、と思いながら半ば呆れたように聞くと案の定、
「うんっ♪ラスボスが手強くてさ…」
という反応が返ってきた。

今私の目の前にいる(というか私の安眠を妨害した)のは、小森秋斗(こもりあきと)と言って、同じ翠月学院高等部の1