私は歩いて帰ろうとしていたら、


「更紗様」



聞き慣れた声がした。



「…呉岳【くれたけ】…どうして」



私の専属運転手の呉岳が本家の前にいた。



「お嬢様からなかなかお電話が掛かってきませんでしたので…」



呉岳とは、生まれてからの付き合いらしい。

呉岳は本当によく気が利いて、私はそのお蔭でいつも助けられている。


物心ついた時にはもう呉岳がいた。

…そして、私のよき相談相手だ。



「…ありがとう」

「礼には及びませんよ、お嬢様」



『さぁ、こちらに』
と、誕生日に母様から頂いた、白のベンツのロールスロイスのドアを開けた。



「…ありがとう」



私は乗り、そこまで本家と離れていないので、あっという間に本家から帰ってきた。