「お兄ちゃん!」




ずっと前、隣に住んでた女の子。




たった3か月で引っ越してしまったけど、俺の記憶の中には鮮明に残ってる。




「見てみて、お兄ちゃん! いちばんだよ!」




幼稚園の“1等賞”と書かれたメダルを首から下げた女の子に、俺はフッと笑って言った。




「良かったな」




親が有名な会社の社長、という事もあって友達は少ない。




大半のヤツらが、俺と関わると何かあったときに大変だ、と親が俺に関わらせないようにしてたらしいけど…。




この子だけは、やたらとなついてきた。




…でも。




お兄ちゃん! といつもいつも駆け寄ってきたその子がパッといなくなった途端…。




「……………………」




俺の人生から、色が消えた気がした。




「舜佑くんは、彼女作らないの?」




「んなもんいらねぇよ」




馴れ馴れしく触ってくる女を冷たくあしらう。




…俺が求めてるのは、お前じゃない。




もう会えそうにもないアイツ。



こうして、時々あの子を思いだしては忘れて…と繰り返し、気付けば約15年。




…そんな時が経った今、忘れかけていたアイツがまた、俺の前に姿を現すことになるとは…。




予想もしていない俺だった。