奈里ちゃんの誘いを振り切って一人で帰った後、胸の中が言いようもなくざわつく。

何かとても重要なことを忘れている気がした。


――あんた、まだ奈里といちゃいちゃしてんの?

べっとり貼りつく気味の悪い声。

いちゃいちゃなんてしてない。
あんたが傷付いてボロボロになった奈里ちゃんを見放したから、側にいたんだろ。


本当はあの時奈里ちゃんが必要としていたのは俺の慰めじゃなくて、彼女の謝罪だったはずだ。

それだけであの子の傷は充分癒えたはずなのに。

なのに彼女は、それをしなかった。


イライラしてどうしようもない中に、妙に冷静な思考が割りこんでくる。


そうだ、彼女を一人にしたら――。

最後まで考える前に、体は跳ね上がっていた。