只今私の彼はご機嫌ナナメ。

「……ねえ」

「何?」

「この問題、どの公式使えばいいのか分からないんだけどなぁ……」

彼は、そんな私の甘えた声にも全く動じない。

「それ、昨日も教えた。少しは自分で考えろよ」

「……」

少しくらいこっちを向いてくれてもいいのに。
彼の視線は自分の参考書と私の問題集の間を往復しただけだった。

「……ねえ」

「今度は何?」

「……やっぱり、怒ってる?」

彼は、ノートの上を走らせていたシャーペンを静かにおくと、「はぁっ」と大きなため息をついた。

「別に」

怒ってるじゃん。

その突き放した口調、
私を睨みつける目。

ものすごーく怖いんだけど!

「深月はオレを怒らせるようなことなんてしてないんだろ? だったらなんで人の顔色を伺うようなことするわけ?」

ぐさっ、ぐさっと私の心臓を突き刺すイヤミたっぷりの言葉に耐え切れなくなって、私は思わずそっぽを向いた。



「──あ。今、目そらした」



……ブチッ。

ブチブチブチッ。


今のは私の堪忍袋の緒が切れる音。

全くもうっ!
人が下手に出てあげてるっていうのに、この男ときたら。


「もーうっ! 仕方ないじゃん!」

そう言うと私はコタツ机をバンと叩いた。