はてさて御堂先輩と三日ぶりに再会を果たした俺は、アパートの敷地に入って彼女を先導しながら会話を広げようと努力している真っ最中だった。
 

いやだって、お互いダンマリとした沈黙を作って家に案内しても気まずいじゃんか。


三日前はちゃーんと会話できたんだし、ちょっち騒動でギクシャクはなっていても時間が経てば、きっとまた普通に会話できる。


そりゃあ、あんなどえりゃあ大騒動を起こした元凶が御堂先輩にあったとしても、俺から砕けた態度を取れば普通に戻ってくれる筈!
 

そうポジティブに思った俺は彼女に、「今日は習い事は無かったんですかー?」と、当たり障りの無い会話を切り出してみた。

なるべく、忌まわしいあの騒動は気にしてませんよオーラを放って接してみる。

 
だけど、彼女の態度はどうだい。
 

ツーンのフン、だぜ?
言葉のキャッチボールなんてハナッからしてくれないんだぜ?
ぶすくれてるんだぜ?

……なんだよもう、めっちゃ取っ付き難いな。


どこぞのツンデレさん、いやツンツンさんかよもう。


こっちがフレンドリーに話し掛けてるっていうのに…、酷い目に遭ったのにも関わらずフレンドリーに接しているっつーのに。
 

もしかしたらやっぱ男嫌いが、彼女をそうしてるのかも。

俺を男としては見てないって三日前は言ってたけど、財閥界で噂になっちまったもんだから嫌悪してるのかも。


それはそれで困ったなぁ。
 

これから家に招くっつーのに、ずーっとツーンのフンでいられちゃあ、俺の方が参っちまいそう。

御堂先輩を誘ったのは失敗だったかな。

あれか、無理して付き合ってもらってる感じか。だったら無理に付き合ってくれなくてもいいのになぁ。


謝罪の品だけ有り難く頂いて、噂が消えるまでお互い交流を持たないとかでも全然良いのに。


「今日は休んだんだ」


「へ?」突拍子も無い台詞に俺は間の抜けた声を上げた。

言葉のドッジボールをしてくる御堂先輩は、「だから!」今日は習い事を休んでこっちに来たんだと言ってるんだ! 何べんも言わせるな、と怒られてしまう。