その人は、相堂 学(アイドウ ガク)と言うらしい。



年は22歳。



繁華街を抜けるまでにその人は何十人もの人から声を掛けられていた。



みんな挨拶をして頭を下げていく。



そしてみんな、「学さん」と呼ぶ。


だからあたしも学さんと呼ぶことにした。



学さんがタクシーを拾って、行き先を告げるとタクシーはしばらく進んで止まった。



学さんが財布から一万円札を出し、「お釣りはいらねぇ」と言った。



初めて聞いた。



ホントに言う人はいるんだなァと感心した。



「葉奈、降りるぞ」


「は、はい」


外は車内とは違って蒸し暑い。



あたしが見上げた先には…とても高いマンションが建っていた。