――あれはいつごろの事だっただろうか。



あたしはいつも通り、小学校へ出かける。


ケーキ屋さんの前を通って。


夏なのに長袖を着ているあたしに、同級生は好奇の目を向ける。


それが嫌で嫌で仕方がなかった。


家には居場所がない。


学校にも居場所はない。


あたしの居場所は、この街には、ない。


そんなことを実感していた、小学生の時期。


――キーンコーンカーンコーン…


放課後を告げるチャイム。


それを聞くと、同級生はみんなはしゃいで教室を出ていく。


あたしはそれが憂鬱でしかたがなかった。




放課後のチャイムは、地獄の始まり。





ケーキ屋の前を通って家路につく。


足取りは、重い。


ああ、暑い。


確か今日はこの夏一番の暑さだってテレビで言ってた。


だから、みんなあたしをあんな目で見てたのか。


「…ハァ」


口から漏れるため息。


それがどれだけ残酷なのかをあたしは知ってる。