「…あさみ、ごめんね。
聞いたかい、俺は酷い夫だよな。
君が苦しんでいるのに、俺は君と居られて喜んでるんだよ…。」


静かな部屋に慎吾の声がそっと響く。


「なあ、あさみ。
君はもう、前みたいにバイクに乗れないのかな。

なあ…、あさみは優しいから、俺に同情したんだろう。

君は俺を好きじゃなかった。

別にどうでもいい存在だったろうけど、俺が必死に頼むから、だから結婚してくれたんだろう…?

そんな優しい君が、どうして今苦しまなきゃならないんだろうね。

俺が代わってやりたいよ。

俺がそうなれば良かったんだ…。」


慎吾の目から涙が零れた。


その涙は握っているあさみの指に零れたけれど、あさみはその涙はおろか、慎吾が両手で自分の手をしっかり握っていることすら感じることはできなかった。