帝国騎士団 第七部隊長ジン・アイヴァンス。
未だ17歳の少年は今日もいつもどおり書類処理に励んでいた。
開け放たれた窓から風が吹き込んで彼の黒髪を揺らした。
今日は朝から書類の相手以外に予定はないので、もう5時間近くも休みなしで取り組んでいる。
「主、よろしいですか」
秘書官、レインが入ってきた。
彼女に限ってはノックをするなと言ってあるから突然現れたことに異議は唱えない。
「なんだ」
ジンは書類上の手を止めず顔も上げることなく返事をした。
「先ほど第六部隊から報告がありまして、不法入国者が逮捕されたそうです」
「へぇ」
相変わらず顔は上がらない。
不法入国者の対処は彼の管轄外。
嫌な予感こそすれ、手を止める正当な理由にはなりえない。