――楓サイド――


「おー楓。真裕はどうした?」


「検診…連れて行かれた」


蓮二達が帰ると言った次の日、シュンが一人でやってきた。

入れ代わり立ち代わりだな毎日…。


「素直に行ったか?」


ガタガタと椅子を出して腰かけながら、おかしそうにそう聞いてくる。


「まあな。ものすげぇ渋々だけど」


「はっ。だろうな。相当病院嫌いなんだろ?」


本当に相当なものだ。

だから最初承諾したときは、本当に何事かと思った。

まさか妊娠とは想像もしてないし…。

今日だって、「ハア…仕方ない…。赤ちゃんに会えるしいっか…」と自分に言い聞かせながら行ったんだ。


「しかしまあ、あんなんでも母親になれるんだな…」


「本当になれるんだろうか」


「おめェが言っちゃおしまいだろうが」


俺だから言うんだろうが。

あれだけ甘えてくる真裕が、子供に甘えられるんだぞ?

俺としては想像もできん。


「まあそれ以前に俺ァ、お前さんが手ェだしたってーのがどうも…」


「だからうるせぇんだよお前ら、そればっかり」


俺だって信じられねー。

あのときはどんだけ後悔したか。

…まああいつがけろっとしててくれたからよかったけど…。

あんときばかりは本当に、あの性格に感謝したな。