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その夜、俺の元に電話がかかってきた。

「会いたいの。」

相手はその一言を告げた。


きっとかかってくる。


俺は覚悟していた。

しかし、その一方で電話を持つ手は震えていた。


「どこで?」


やっとのことで答えたその声は、か細く弱弱しいものだった。

「例の空き家で待ってるから。必ず来てね。彼女も、待ってるからね…」

それだけ言うと、電話はすぐに切れた。

俺はしばらく電話を見つめていた。


ひたいから一筋の汗が流れた。


そしてそれは、ぽたっと音を立てて床に落ちていった。



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