side 右京


「おむすび〜、おむすび〜、おにぎり〜ころころ〜」


声変わりなんて程遠い、トーンの高い声が元気に歌う。

米しか出てこない歌だ。


しかもおむすびとおにぎりで若干違う点に、知性が感じられる。


中村 小春。


あいつに言われるままに、”あめ組”と書かれたプレートの教室に通された。


ちっさい椅子に座ったまま、教室全体を見渡す。


絵本を眺めて、おにぎりの歌を口ずさむ男の子。

ふよふよした柔らかそうな人形で遊ぶ女の子たち。


全部が小さくて、それなのにエネルギーが溢れている。


こんな小さくまごまごした場所は、妙な居心地の悪さを感じる。


今日は特売の関係でいつもと違う道を通ったばかりに、水を被る羽目になった。


タイムセールには間に合わないだろうし...。


最悪。


連絡先も何も知らなかったから、今日がバイトの日だって知るはずもない。


たまたま運が悪かったのか。