「で? マリアの様子はどうだね?」




 ――天使庁。


 紺碧の空にかかる薄雲の隙間に浮かぶ、幾つもの円柱に支えられた白亜の美しい建築物。その最上階、中央の部屋。

 開け放された窓辺から聞こえる声に、ミカエルは忙しく書類を捲くっていた手を止め顔を上げた。

「なんです? わざわざ使い魔まで使って私と話しにくるとは珍しいですね」

 窓枠のふちにとまる黒い鳥に向かってミカエルは答える。

「なかなか直接訪ねることも出来ないほど忙しい身だからな」

「……そんな忙しい身でもマリアが気になりますか? ルシフェル」

 机に頬杖をつき、溜息混じりに問うと、それに応じるように黒い鳥は喉をくっくと鳴らした。

「過ちを犯したとはいえ元は優秀な部下だったのだ。気にしたとて不思議はあるまい?」

「そうとは言っても甘すぎると思いますがね」

 少しばかりの皮肉をこめて苦笑を漏らす。