およそ30分後。
走っていた車が止まった。

「着きましたよご主人様、お嬢様、晴さん」

元執事の船木が言う。
もう聞くことのない「お嬢様」という呼び名。
今思えば、なんて素敵な呼び名だろう。
なんたって様付けだもの。

車を降りると、高級住宅街の風景が広がった。
うーん……。
高級であることは間違いないけど、あたしが少し前まで住んでいた家よりかなり小さい。
まあ、一般家庭よりかはマシだけどね。