ー…あれは今年の秋のはじめ頃ー。少し寒くなってきた夕方のことだったような気がする。

部活が終わってもう空が夕日によってオレンジ色に染まっていたとき、一人の男と出会った。


その男はとても美しくて、漆黒の髪を後ろで軽く束ねて、全身が黒いコートで覆われている。
肌は白く、目はコバルトブルーだった。二重の目からは睫毛がこぼれでている。



ー美しいー



私はその男を見て、そう思った。
ただ、いきなり一人の男が現れて、少し戸惑う。


「ー君が…真白小雪(マシロ コユキ)ー?」

目の前の男は、形の整った唇を小さく開ける。
私は男から目が離せなくて、じっと男を見つめた。


「ー…どうなの?」

少し苛立ちをみせた男は、首を傾げて私を睨む。
我に返った私は、やっと口が開くようになった。

「……そうですけど……。貴方は?」