尚輝という名は、両親が「どんな困難にも負けずに輝いていて欲しい」という想いを込めて付けた名だと聞いた。

妹の梅子は、祖父が付けさせろとせがんだ挙げ句、大好きな梅の花に因んで付けたそうだ。

妹は、地味だしあまり良いイメージが無いと大層嫌がっていたが、祖父は「桜と梅」という喩えがあるように、美しい物の一つなんだぞ、と胸を張って言っていた。

祖父の言葉は妹に届いて無いようだったが。

妹──梅子に比べるとまともな名を与えられたが、一時、僕も自分の名が嫌いだった。



『先天性の視覚障害』──。



僕は生まれ堕ちてから、ただの一度もこの世の景色を知らない。

そればかりか、愛する家族の顔も見た事が無いのだ。

その事に苦悩した果てに、僕は暴れたりもした。

家で度々癇癪を起こし、親に酷い事も言ったりした。

今、思い出すと恥ずかしい限りだ。