七時上がりともなると、太陽の恵みによって開けていた視界が夜の帳に包まれ、人々はボンヤリと足元を照らす街灯と駅前に建ち並ぶネオンを頼りに帰路につくのだろう。

その点朝と変わりの無い感覚でいる僕は、昼間と違う意味で賑やかな街の音を聞き分け、帰りの改札を通る。

こうして過ぎ去る人々と雑音を掻き分けていると、時々こんな風に思う事がある。

人は闇に恐怖するから光を求めて歩くし、酒を飲み気分を盛り上げて紛らわしているのだとしたら、生涯暗黒に閉じ込められているのかもしれない自分は何なのかと。

まぁ、ストレス社会に生きる現代人に解消する術を奪う訳にいかないし、そんな疑問を投げ掛ける事自体ナンセンスなのかもしれないが。

会社が終わって、室井さんとは途中で早々に別れた。

帰りの電車の進行方向が逆だし、何より明日は祖父の四十九日だ。

夕食でもどうですか?と誘われたが、それも丁重にお断りした。