「ひっ、ひぃぃぃいっ!

助けてくれ、頼む」

バンダナに眼帯をした見るからに悪そうな男が必死に命乞いをしている。

その男の前にキリッと背筋を伸ばして立つ小柄な人物。

その横には無慈悲の業火の如き深紅の鎧を身に纏う騎士がたっている。

騎士はゆっくりと、しかし果てしなく無情に男の首に、怪しく煌めく刄を突き付けた。

「ひっ……ひぁっ」

男はガタガタと震えながら頭を擦り付ける様に土下座をしている。

「こらお止めなさいブリュン。

彼はこうして反省しているのです、命まで取る必要など何処にありますか?」

優しく諭すような声。

灰色のローブに隠れていて見えないが、おそらくは若い女性であろう。

ブリュンと呼ばれた深紅の騎士が、剣を引く。

その様子を見た女性が一歩前に出て、男に細く綺麗な手を差し出し言う。

「ではこの村から盗んだ宝石を全て返すと誓いますね?」

男はバッと冷や汗でびっしょり濡れた醜い顔を上げる。

そして飛び付く様に手を握った。

「誓います。誓いますぅう!!」