全てを食らい尽くそうとする炎に消防士らは一歩も譲らず凄まじい功防戦を繰り広げていた。

炎が風に揺られ、飛び交う火の粉が牙を剥く。

そこへ身を乗りだし、なおも放水を続けた。



「形見の‥‥‥」
どこからか、泣き崩れそうな声がした。

「形見の写真を誰か‥‥‥、取りに行かなきゃ‥‥!」

おばあちゃんが家に入ろうとするのを消防士がとり押さえていた。

「危険ですので下がってください!」

消防士が説得していたが、おばあちゃんは聞いてないようで家に入ろうとしていた。

それを見ていた消防士の隊長らしき人が駆け寄って、おばあちゃんに

「動かないで下さい!」
「‥‥‥‥‥」
「大丈夫だからね!」

と、おばあちゃんを落ち着かせていた。


おばあちゃんにとって、おじいちゃんの形見の写真、もう動く事のない笑った笑顔の写真がなくなってしまったら、もう二度と会えなくなってしまう。
あとは思い出の、記憶の中でしか会えなくなってしまう。

僕はいても立ってもいられなくなっていた。

その時、

「隊長ぉぉ!」
「危険です!やめて下さい!」

僕が消防士達に目をやった時には、
消防士の隊長は燃え盛る炎の家へ勢いよく入って行った。