(一)


僕のご主人様は殺し屋だった。


依頼を受ければ誰でも殺す。ためらいなんかない、冷酷に、何人でも、誰でもだ。


“集団銃器虐殺”(ジェノサイドトリガー)と、以前情報屋が言っていたが、僕はあまりその呼び方は好きじゃない。


ティラティール。
ティーと可愛く呼びたいけど、僕はガァとしか鳴くことができない。


色々な言葉が話せる人間が羨ましい、僕もティーとお喋りしたいのに。


「クロ、音をたてるな」


音を立てたつもりはないけど、ティーにとっては何かを感じ取ったらしい。……怒られちゃった。


僕は伏せをしたまま、じいと獲物が来るのをティーと待っていた。


廃ビルばかりが並ぶ、灰色の街には今現在誰も住んでいない。いたとしても、チンピラとかバイヤーとかだろう。