「……そんなことより、準備しないといけないんだが」

今日は平日

いくら期末考査が終わり、夏休みを目前にした消化試合のようなじゅぎょうだと言っても、学校は学校、行かなければならない

「ん? あたしはもう準備出来てるよ」

そう言ってするりとベッドから降りる彩

……うむ、確かに制服を着ている

寝てたのにシワ一つついてないのが不思議だけど

「うん、彩が準備万端なのはよく分かった、偉いぞ」

「え、偉い? ………エヘヘ……」

照れたように笑う彩

こういうのが可愛いんだよな…………って、じゃなくて

「うん、偉い偉い。でさ、俺も準備しなくちゃいけないんだけど」
「うん、どうぞ」
「いや、どうぞじゃなくてさ……。普通、出ていかない?」
「なんで」

首をかしげて心底疑問そうにする

いやいやいや

「俺、これから着替えるから」
「うん、それはそれでいいシチュエーション………じゃなかった、あたしがいた方がいいよね!」

「………出てけ、世間体的にも」

駄目だ、こいつは油断ならない、追い出そう

「ぶー、浩一の意地悪ぅ」
「なんとでも言え。ほら、早く出てく」
「……浩一は世間体と私、どっちが大事なの?」

潤んだ目で、妙に芝居がかった声で聞いてくる彩

そんなもの、答えは決まってる

「もちろん、世間体だ」
「……うわーん! 浩一のバカー!」

泣きながら出ていった

……ま、いっか

そうして、やっと準備を始める俺であった