バイクが走り出す。


流れる様な夜風が、アタシ達を一瞬で包み込む。


アタシは那智の服の裾を掴みながら、グーッと空を仰いだ。


「落っこちるぞ」

那智がそう言って速度を落としたけど、アタシは懲りずに空を見上げていた。


大きなお月様がアタシ達の後を追いかけてくる。


「那智~月が追いかけてくる~」

「はぁ?バ~カ」


那智は呆れた様に笑ったけど、本当だもん。


追いかけてくるくせに掴もうとすると逃げてしまう。


絶対に届かないものなんだろうな。


そう思ったら何だか少し寂しくなって、那智の背中に視線をうつした。


顔は女の子みたいに綺麗なのに、背中は大きいんだな



「那智~」


「ん?」


「いつも何食べてんの?」


「はぁ?」


ただ疑問に思った事を言っただけなのに、可笑しそうに那智は笑った。


「たいしたもん食べてませんよ。」

クスクスと笑った那智の背中に、そっと両手を回した。


「なのにこんな大きいんだね。」

あったかいな。




那智は何にも言わなかったけど


気づいたかな?


アタシの心臓の音。