【実亜side】

 …がーーーんっ

「実亜、とりあえず口閉じなさい」

 私、早苗実亜・高校1年生は、今!人生の危機に直面しておりますっ!!

「…同じ教室にいるんだから、席なんてどこでも一緒でしょ」

 私に人生最大の危機が訪れるというのに、まるで興味ない、とでもいうふうに爪を磨く親友の吉沢怜香。


「…くっ!この冷血女ぁ!!」

「なに?」


「…何でもありません」

 私の鋭い睨みは、怜香には通用しないらしく、冷たく言い返された私は、見る見るうちに小さくなる。

「…はぁ。実亜、あんたもそろそろ独り立ちしてくれないと、あたしが困るんだけど!!」

「……はい、さーせん」

「反省してるのか!!」

「へい」

「……」


 呆れた顔の怜香は、私に構うのを辞めたらしく、爪磨きを再開させた。