「おまえがいなかったら、俺はあの時に撃たれて死んでた」


3人掛けソファーに腰を下ろして、隣に座ったわたしの髪を優しく撫でる。


―――大神奏さん。27歳。


表の顔は大神物産㈱グループの三男坊。
裏の顔は―――大神組率いる若頭。


「おまえの指を見せてみろ」


右手を掴み取り、小指の手術の痕を確かめた。



わたしの名前は天宮りお。
高校二年生。

2ヶ月前の春に、極道の抗争に巻き込まれてケガをして、今は大神奏さんの元でリハビリしながら生活をしている。


「もっと指を曲げてみろ」


奏さんに言われて右手に力を入れてみる。

銃弾で千切れた指は、腕の良い医者にかかったおかげで、血が通い微かに動くようになったんだけど。